村上椅子

2006-07-15

雑記

あまやどり


京都に夏を告げる祇園祭、いよいよ宵山と山鉾巡行がせまってきました。

何年ぶりかにその雰囲気を味わおうと友人との待ち合わせへの道の途中、
バケツをひっくりかえしたような夕立ちにあいました。
傘も役にたたないような降り方。
人通りもあまりない路地の、よその軒下をお借りして雨やどりしていると、
買い物帰りらしい風呂敷をさげたおばあさんが、同じようにはいってこられました。

少し間をおいて、どちらからともなく顔を見合わせ、『すごい雨ですねえ…』。
そのあと、ふたりで降りしきる雨を眺めることしばし。
小降りになってきたところでまた顔を見合わせ、
それじゃ、というかんじで、右と左へ別れました。

たったそれだけ、何も会話はなかったけれども、
それまで急いで歩いてきた街の中で時間が止まったような、
ほっこりした気持ちになれるような不思議なひとときでした。
雨もなかなかいいものです。

四条に向かうにつれて、ゆかた姿のひとや出店がちらほら見え始めます。
そんなお祭りの賑やかな雰囲気に向かって歩いていきながら、
気になっていたのは、おばあさんの持っていたひとつだけのお弁当。
祭りの賑やかさの届かないところで、ひとり夕食をとられるのでしょうか。

お祭りの盛り上がりと雨やどりの静かな時間とがとても対照的で、
提灯の柔らかいあかりの、どこか切ない感じと重なって
なんだか心に残ったできごととなりました。